言葉の力ではない力・・・

かねこカウンセリングオフィスの金子です。

今回はタイトルがややこしいですが、これまでに「言葉の力」としていくつか記事を書かせて頂きました。一方、時に「言葉」が無力、いやむしろ、マイナスな力となってしまう場合がある時も時に感じます。そのような時には私は以下の二つの詩を思い浮かべるようにしています。

相田みつお

「そっとしておいて」

どうかことばを

かけないでください

ただ そっとしておいてください

わたしのことを

ほんとに思ってくれるならば

どうかなんにも

言わないでください

どうか黙っていてください

わたしのことを

こころから考えて

くれるならば

いまのわたしには

どんなことばも

どんな慰めごとも

役には立たないのです

ことばをかけられるとそれだけで心の傷が

痛むんです

ただそっとしておいてください

ただ黙って

遠くから見ていてください

いまのわたしには

それが一番いいんです

一番ありがたいんです

どうかなんにも

しないでください

ことばをかけないでください

ただ そっとしておいてください

 

田村 隆一

「帰途」

言葉なんかおぼえるんじゃなかった

言葉のない世界

意味が意味にならない世界に生きてたら

どんなによかったか

あなたが美しい言葉に復讐されても

そいつは ぼくとは無関係だ

きみが静かな意味に血を流したところで

そいつも無関係だ

あなたのやさしい眼のなかにある涙

きみの沈黙の舌からおちてくる痛苦

ぼくたちの世界にもし言葉がなかったら

ぼくはただそれを眺めて立ち去るだろう

あなたの涙に 果実の核ほどの意味があるか

きみの一滴の血に この世界の夕暮れの

ふるえるような夕焼けのひびきがあるか

言葉なんかおぼえるんじゃなかった

日本語とほんのすこしの外国語をおぼえたおかげで

ぼくはあなたの涙のなかに立ちどまる

ぼくはきみの血のなかにたったひとりで掃ってくる

 

「言葉」と「言葉でないもの」・・・とても難しく答えが出ないものですが、ふと考えてしまう時があります。

 

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