「叱る」優先順位を考える

かねこカウンセリングオフィスの金子です。

昨年度の話で恐縮ですが、ある中学校の教頭先生とひょんなきっかけでお話しする機会がありました。非常に教育相談に理解のある先生、私としては大変ありがたく、連携・協力が出来ていると思っているのですが、やはり教頭先生という立場ゆえに、諸々の先生方の指導法や生徒への関わり方について、時に首を傾げることがあるということを話してくれました。

その指導法や関わり方について、ここでは割愛しますが、それらに関連している内容をここで紹介したいと思います。

「学校の当たり前をやめてみた」 千代田区麹町中学校長 工藤勇一先生著 

ここでは工藤先生が赴任1年目に行った校内研修の資料が載っています。それらは「叱るものさし(優先順位)」を考える研修とのことです。少し長くなりますが、引用を続けます。

“表1の①から⑬を見てください。この中であなたが特に厳しく叱りたい、あるいは叱ってきた項目を挙げてみてください。いくつでもかまいません。実際の研修では、先生方に印をつけてもらった後、これを一つひとつ読み上げて、自分が厳しく指導したいと考える項目のところで手を挙げてもらいました。驚いたことに、教員の手を挙げる項目が、あまりにもバラバラで、つまり、指導に対する感性が異なっていることが確認できました”

表1

①コンビニで万引きをした

②下校時に雨が降ってきたので、玄関にあった誰かの傘を黙ってさして帰った

③学校にお菓子を持ち込んで食べた

④放課後、係の仕事をさぼって黙って下校した

⑤授業中に隠れてマンガを読んだ

⑥4階の教室のベランダの柵にまたがって友だちと遊んだ

⑦授業を勝手に抜け出した

⑧クラスのある生徒を「お前は障害児だ」と馬鹿にした

⑨授業中に寝た

⑩一人の友だちを数人で無視し続けた

⑪友だちとけんかして殴ってけがをさせた

⑫深夜、友だちと公園で大騒ぎして近隣に迷惑をかけた

⑬違反の服装で登校した

“次に何を最も厳しく叱りたいと思いますかと話しました。私が1番に叱りたいのは6番です。命が一番大切だということを指導したい。これは緊急性があるので、何をおいても指導する必要性がある。その次は、人権や犯罪に関わることです。1番や2番、8番などです。10番、11番、12番なども関係するでしょう。

でも、それ以外の、日常的に注意をする機会の多い5番や13番などは、学校の場面では、実際に厳しく指導されるのではないでしょうか”

(「学校の当たり前をやめてみた」 千代田区麹町中学校長 工藤勇一先生著 P48より引用)

 

この最後の部分は、実際に私がスクールカウンセラーとして中学校に勤務している時に、何度か遭遇したことがあります。より具体例を出すと、授業中に漫画を読んでいたことを教科の先生に見つかり没収されて、放課後担任に呼び出され職員室でこんこんと説教されている生徒がいました。説教している先生はもちろん座っていますが、生徒は立っています。

そして、時に部活動の用事や提出物を持ってくる生徒の出入りもある中で、該当生徒は大きな声で叱られていました。その時に、私は何も言えずに、その様子を見ていたので、恥ずかしい限りですが、「そこまで叱ることもないのになぁ・・・せめて叱るなら場所を変えて(他の生徒に見られないような場所)説教すればいいのになぁ・・・」と心の中で思っていました。もちろん、この場合、担任の先生なりの考えや指導のもと、説教していたことと思います。しかしながら、私の中では、「たかだか、漫画を読んでただけなんじゃないか。その分、学習が遅れるかも知れないし、本人が結局は困ることだろう。いや、もしかすると、授業の内容がつまらなくて、つい漫画を読んじゃったんじゃないかなぁ・・・うん?それとも授業中にも関わらず、読みたくなるくらい面白い内容なのかな・・・」などなど、私の妄想は膨らむばかり。そんななか、ようやく説教も終わり、職員室から出ていくときのその生徒の顔は「ハァ~~~、長かった・・・」といった表情と私は感じました(*_*)

最後にまた工藤先生の著書からの引用します。

“教員が、子どもの指導・支援で用いる言葉は子どものその後の生き方・価値観に影響する大切なメッセージです。特に、子どもが問題行動を起こしたときに叱るメッセージはとても重要です。それゆえ、教員は子どもが行った行為一つひとつについて何が重要なのか、本質的に悪いことなのかどうか、その軽重をよく考えて、指導しなければならないと考えます。

私はよく教員に、「どうでもよいことと、どうでもよくないことを、分けて叱りませんか」と話しています。どうでもよいことなら軽く注意を促せばよい。逆に、命や人権に関わること、差別や暴力といった行為には厳しく対応し、自身の言動の意味を認識させる必要があります。“

 

この「どうでもよいことと、どうでもよくないことを、分けて叱りませんか」という視点は教育に限らず、人材育成や、子育て等にも有意義なものと思います。自戒の念も込めてですが、今回取り上げた、「叱るものさし」を改めて考え、自身の子育てはもちろん、学校現場で働く先生たちへの支援に役立てていきたいと思います。

長文、お読み頂き、ありがとうございました。では、また。

 

 

 

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2020年4月1日