見えないものへの恐怖への対応策②

かねこカウンセリングオフィスの金子です。

前回の続きです。考え方の癖や、やめられない行為の改善・修正について述べたいと思います。私は認知行動療法という心理療法の一つの考え方を基本にしてカウンセリングをしていくことが多いです(もちろん、違う時もありますが・・・)。この認知行動療法について述べるとキリがないので(専門書にお任せします)、今回はザックリとした感じで、ご紹介できたらと思います。

まず、これはカウンセリングにおいては基本中の基本ですが、今現在、不安障害や強迫性障害で苦しんでいる方の訴えを、まずは真摯に聴き受け止める。そして、お話してくださったことを労い、これまでその人にしかわからない苦しみに共感します(この「共感」というのがまた難しいのですが)。そして、「頭ではわかっていても、やめることのできない」という点に注目し、まずはそこを受け入れていくことを共に検討します。この時点で「え?」と思う方がいらっしゃるかもしれません。

より分かりやすくするために事例を出すと、「菌がついてしまったと思い、1時間ほど手を洗ってしまう」というAさんがいるとします。この場合、1時間、手を洗うことをやめたいというのが主訴かと思いますが、はじめから、この「手を洗うのをやめる」ということに注目はしません。なぜなら、それが出来たら苦労しないからです・・・。まずは、手を洗ってしまう自分を受け入れ、ある意味、綺麗好きな側面や予防面での確実さという側面があることを共有します。それから、いかに「手を洗う」という行為の背景にあるAさん独自の考え方の癖をより具体的に明らかにしていきます。

例えば、「菌がついたことで、自分自身が病気になって、まだ小さい自分の子どもに移してしまったらどうしよう」、「過去にテレビで、いくら念入りに洗ったとしても、完全の菌を殺すことは難しいと専門家が言っていたのを見た。自分の洗い方は洗い残しがあって、そこに菌が残っているかも知れない」などというものです。このような独自の考え方を「考え方の癖」と呼びます。これらをより具体的に挙げて頂き、自分の考え方の癖を知ってもらう。

そして、それらを知った上で、他の別の考え方が出来ないかを共に検討します。ここでは「別の考え方の引き出し」を作っていく作業です。例えば、「菌がついたかも知れないが、今のところは、体の異常や症状というものは出てないし、大丈夫かもしれない・・・心配だけど」、「1時間かけて洗ったんだから、今日のところは、なんとかなるかも・・・」といった考え方です。はじめのうちは多くの方が、「そうは思えない」、「そうは思っても、やはり自分の癖の方が強くでてしまう」とおっしゃいます。そこは焦らず、(なぜなら、その考え方の癖で何年も生きてきたのですから)、繰り返しになりますが、

1、まずは自分の考え方の癖を受け止める

2、今自分の癖が出てるなと、客観視してみる

3、その癖だけにとらわれず、別の考え方はないか?と考えてみる(出来る範囲で)

といったプロセスを重ねていきます(うまくいったときはそれを続けて、うまくいかなかった時は、また別のプランやアプローチを検討していきます)。

次回は、その後の進め方を紹介します。