よく来たね①

かねこカウンセリングオフィスの金子です。

今回は数年前にスクールカウンセラーとして関わった、あるケースを紹介したいと思います(詳細は個人情報の関係もあるので、一部修正及び変更しています)。

中学2年 女子 S子さん(仮名) 

非常に真面目で内気なS子さん。中1の冬休み以降、特にこれといった出来事や思い当たるようなきっかけもなく、朝起きにくくなり、学校に行きにくくなりました(←こういった原因が特定できない不登校事例というのは案外、多いものです)。両親ともに始めは驚くと同時に、「なんで行けないのだろう?」、「なまけているだけではないか?」という思いを抱きつつ、母親は私と定期的なカウンセリングが始まりました(お父様も協力的な方でしたが、仕事の都合で平日の昼間の時間帯の都合がつきにくいとのことでした。また、身体的な疾患等の有無もいくつかの医療機関で精密検査をしましたが、結果は特に異常は見受けられませんでした)。

母親は熱心にカウンセリングに通い、S子さんへの関わり方や声掛けなどを私と共に検討し、実践していきました。そのような中、学年があがり、夏休み明け(実際には夏休み中に、一度母親と一緒に相談室に来ることが出来、私も会うことができました。それまでには様々なプロセスがあったのですが、今回は割愛します)から、相談室に週の3日程度、10時半から通うことが出来るようになりました。

そこで、S子さんは、相談員の先生とも関係性を築き、私とのカウンセリングも週に1度、行うようになりました。その中でS子さん自身が好きなものや趣味についての話題となると、笑顔も出てくるまでになっていました。そして、元々真面目な性格ですので、勉強への意欲や教室に行ってみるといった話も出てきました。とても順調に回復していると私は思っており、S子さんの力(元々高い能力をもっていました)のすごさを実感していました。

そのようなプロセスを経て、まずは教室復帰の前に、相談室に登校したら、職員室まで挨拶に行くという段階をS子さんと共有し、担任・相談員にも入って頂き、実践していこうという話で固まり、実際に、職員室に行くことが出来るようになりました。

が、ある日、事件が起こりました。その日はたまたま、担任や学年の先生が授業中で不在で、職員室には別の学年の先生しかいませんでした。そしていつも通り、S子さんは、登校したことを職員室に挨拶しに行きました。すると、そこで対応したある先生から、

「S子さん、今は10時半です。他の生徒はもっと朝早くから登校しています。高校や大学では許されないことなんですよ。そこはわかっていますか??」

という旨を言われてしまいました(実際は、口調はきつく、頭ごなしで、大きな声で言われたと後にS子さんは私に語ってくれました)。

私はこのエピソードをS子さんから聞いて、その教員に対して怒りと共に大きな落胆を抱きました。「はぁ…まだこのような先生がいるのか…時代遅れも甚だしい…」という想いです(今の先生方は非常に多忙で大変な仕事であることは重々に理解していますし、目の当たりにしています。もちろん子どもたちのことを思い、素晴らしい先生が多いのも事実です。しかしながら、少なからず、今回のような声掛けをしてしまう先生も残存しているのも事実です…)

不登校状態になっている子どもたちは好きで学校(教室)に行かない、行けないのではありません。多くが「行かなきゃ」と思っている。しかし、実際に体と心が言うことをきかない。そのようなしんどい中で、どうにかこうにか、学校に来ていることに対してなぜ、「よく来たね」と言えないのでしょうか??そこが不思議であると同時に知識や想像力の乏しさを感じてしまいます。この「よく来たね」という言葉は私の好きな言葉の一つですが、この言葉がタイトルの歌があります。ここで紹介します。

「よく来たね」

そうです、皆さんご存じ、ミスターチルドレンのボーカルの櫻井和寿さん(作詞・作曲)です(細かくいうと小林武史さんと櫻井和寿さんを中心にした「Bank Band」というバンドでの楽曲です)。

おこがましいかも知れませんが、是非、学校関係者の方々はもちろん、保護者、子どもたちといった多くの方々に、聞いてほしい曲と思っています。

次回は、スクールカウンセラーについて、より具体的なこと(勤務体系や私自身が心がけていることなど)を述べたいと思います。

 

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