本の紹介 38
かねこカウンセリングオフィスの金子です。
お正月休みに読んだ本↓
の紹介、パート1です!!笑
以前(2024.12.26)のブログで「分裂病の精神病理2」を読もうと思ったのですが、こちらもまだ、最後まで読んでいなかったので、こちらを先に読み、まとめました。ので紹介したいと思います。
「家族療法入門」システムズ・アプローチの理論と実際、遊佐 安一郎、星和書店、1984.
P176
二重拘束の単純な形での例を挙げてみよう。場所は精神病院。登場人物は、最近入院した分裂病患者と見舞いに来た母親。見舞いに来た母親を見つけて、うれしそうに母親のもとに来て、歓迎のキスをしようとする。母親は反射的に、わずかだが身を引く。それに気づいた青年もキスをせずに身を引き、躊躇する。それを見た母親は「どうしたの。おかあさんは見舞いに来たのにうれしくないの」と言う。青年は困惑した表情を示す。それに対して母は「男なのだからそんなにひがんだり、感情に左右されてはいけませんよ」と言う。青年は落ち着きをなくし、母親との面会も数分しか耐えることが出来ず、母親は多少気落ちして帰る。母親が帰った後、青年は病棟内で、暴れ出し、保護室に入れられる。この患者の行動は、スタッフにより「理由もなく暴れ出した」と報告されている。
この例で前提とされていることは、この青年は長期間、二重拘束状態にあり、その結果、入院したということであろう。したがって、この例は、あくまで患者の二重拘束の主観的経験を再現された事件であろう。しかし、このような卑近な例の中にも、二重拘束の重要な要素が含まれる。この例での母親は、同時に二種類のメッセージを送っている(実生活では、二種類以上の相反するメッセージが交叉することが多いが、、ここでは説明の明確化のために、二種類のみのメッセージを扱う。
一つのレベルでは、接近してくる子に対する回避的または敵意的行動が見られる。母親は自分の回避的な態度を意識していないかもしれない。他のレベルでは、子が自分の回避行動に反応した際、自分が子を常に受容していないということを否定するための、いわば「懐疑的」な接近的、好意的行動を示す。そして子は、そのような二種のメッセ―ジを正確に判断すれば罰せられるし(「おかあさんが見舞いにきたのにうれしくないの」――すなわち「親不幸者!」といった外罰的メッセージ)、逆に正確に判別しなくても罰せられる(「男なのだから・・・」――すなわち「あなたは弱くてダメな子なのね」といったメッセージ)。
やや引用が長くなりましたが、今回取り上げた「二重拘束」(別名「ダブルバインド」と呼ばれます)とうのは、要するに「どちらに転んでも、受け手はストレスを感じてしまう」ということです。このような状況下では、心が休まらず、疲弊してしまう事は自明のことですよね。
既述の例は、統合失調症(本の中では分裂病(旧名称)でしたが、日常でも、ついこの「二重拘束」が見受けられる場面があります。
例えば親が子どもに対して「怒ってないよ!!」と言いながら、語気が強く、語尾が上がって、目が怒っているような場合。子ども側は「怒ってない、といってるけど、嘘だ、怒ってる」と思いますよね・・・。
そして、子どもは、どちらのメッセージを信じていいのかわからなくなり、混乱してしまいます。
自戒の念も込めてですが、なるべく「二重拘束」とならないようなメッセージを対人コミュニケーションにおいては心がけるようにしていきましょう!!
ではでは。