本の紹介 24

かねこカウンセリングオフィスの金子です。

12月に入りましたね!

定番の本の紹介です。

今回も面白かったです!

カウンセリング場面に限らず、看護学校の講義や講演会などで、嫌な記憶を克服するための方法やつらい出来事からの回復のプロセスにおいて、脳の仕組みをお伝えすることが多いのですが、それらを裏打ちする内容であったとともに、新たな学びが出来ました。

以下、気になった部分の引用です。

「忘れる脳力」、岩立康男、朝日新書、2022.

P50
脳の容量は有限である。そして、仮にその容量をどんどん増やしていくことができたとしても、その維持には膨大なコストを要し、蓄えられた記憶どうしを適切につないでいく事は容易ではない。多くの知識を溜め込めば優れた判断ができると言うのは間違いであり、むしろ余分な記憶・知識は適切な判断や考えの雑音となってしまうこともある。忘れることによって初めて、脳は新しい記憶を取り入れ、その人らしく「考える」ことができるようになるのだ。

P66
忘却曲線は「忘れないため」の文脈で引用されることが多いが、「忘れるため」に活用することもできる。特に忘れにくい、「嫌な記憶」について考えてみよう。なぜ、「嫌な記憶」を忘れにくいのか。その記憶が情動を動かしたこと、そしてその記憶を何度も何度も反芻してしまうことが原因だ。その出来事を思い出しては、「ああすれば良かった」、 「こうすれば良かった」と考え込んでしまう事は誰でも経験があるだろう。
しかしこれだと、すぐに何度も”嫌な記憶の復讐”をしているようなものだ。忘れたいような嫌な出来事があったら、出来事そのものを振り返ることはせず、気分の落ち込みといった感情の受け止めだけにとどめるようにしよう。嫌な記憶はすぐに「復習」はせず、最初の1日で
なるべくたくさん忘却してもらった方が、長く引きずらずに済むのである。

ここで出てきた「忘却曲線」というのは、エビングハウスというドイツの心理学者の提唱した時間の経過と記憶の関係を表した曲線の事です。是非、インターネット等で検索してみてください。なかなか面白いデータと思います。

続いて、

P85
嫌な記憶を忘れ、不安感を軽くしていくためにはどうしたらいいのか?
意外かもしれないが、不安を遠ざけるのではなく、まずはしっかりと落ち込むことが必要なのである。その現実を真正面からしっかりと受け止めて、ときには自分の力不足を認めてしまおう。
不安を和らげるために、「その不安感に一時的にどっぷりつかって十分に落ち込む」と言うのは逆説的なようにも思えるが、なぜ、落ち込むことが重要なのだろうか?
落ち込んで何もやる気が起きず、ぼーっと過ごす時間は、そのことを記憶に残しにくくするからだ。

P203
忘れることに罪悪感持つ必要ないのだ。忘れることへの罪悪感は、単に小学校の頃から刷り込まれた、「答える」ことを主眼とした教育の影響によるところが大きい。教科書の内容を覚え、すぐに答えられたところで、この現代社会では何の価値もないと言っていいだろう。
むしろ重要な事は、「質問すること」にある。それは教科書に答えを求めることであり、質問する側にも、対象をしっかりと観察し、自分で「考える」ことが求められる。忘れずに記憶しそのまま「答える」ことよりも、自分にとって必要ない記憶を捨てて、蓄えられた意味記憶をもとにして考えること、その上で質問することこそが、これからの世界で求められることなのである。

最後の、

「自分で考えて、自分で質問する力」というのは、私も本当にこれからの時代に必要となってくる力だと思います。

「自分が何をしたいのか」、「自分だったらこう考える」・・・

「自分が」、「自分が」となり過ぎても良くないとは思いますが、

相手の考えを認めつつ、自分の考えを熟成していく作業は、より良く生きていく上で、役立つかも知れません。

是非、自ら考える力を養っていきましょう!!

ではでは。

 

 

 

 

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