本の紹介 43
かねこカウンセリングオフィスの金子です。
恒例の本の紹介です。今回はこちら!!
「躁鬱大学」気分の波で悩んでいるのは、あなただけではありません、坂口恭平、新潮文庫、2023.
躁鬱病を患う著者が、病気との付き合い方や躁鬱病の人が生きていくための技術や心構えをとても分かりやすい言葉で書かれています。本屋さんでたまたま出会いました。
いくつか引用しますね。
P145
言葉って常に自分に言い聞かせているんですよ。これは僕が文章を書く人間だからなおのことよくわかってますが、言葉はすべて自分に向けて書くんです。だからこそ、読む人の心に染み渡るんですね。つまり、ある文章を読んで心に染み渡ったとき、それはいい言葉を見つけたわけではなくて、同じことに苦しむ同志を見つけたってことなんです。言葉は人なんですね。
P167
「人類皆、人からどう見られているかということだけを悩み続けている」
人類皆そのことについて悩んでいるので、もはやそれは悩みではありません。むしろ、それは人類に共通する特徴だと言えるでしょう。
だからそのことで悩み続けるってのは、人間であることに悩んでいるってことですので、ナンセンスなんです。答えがないんです。繰り返すんです。解決することはできません。だって、それが人間だもの。
どうでしょうか??
二つ目の引用はなかなか面白い着目点だなぁと思いました。「人類、皆」というのは「本当に皆かなぁ?」なんて思ったりもしましたが、他者からの評価で悩まれている方が多いのは私も仕事柄、感じます。生きていく限り、他者と接することは避けて通れないことですから、そこになんらかのストレスは生まれる事でしょう。ポイントはその「程度」の問題かと思いました。他者からの評価を全く気にしないで生きていくのはなかなか難しい。けれども、あまりにも気にし過ぎてしまうとストレスがたまる一方ですものね。「適度な感じに悩む」まぁこれが出来たら苦労しないという話しにもなりますが、意識していくことで少しでもストレスが減るといいのかぁと思いました。
最後に、本書の中では精神科医の神田橋條治先生の「神田橋語録」が引用されています。神田橋先生が躁鬱病について口述したものを聞き取りしたPDFファイルです(インターネットで見ることが出来ます)。私も印刷してファイリングしました。なかなかこちらも面白かったです。
神田橋先生の本は何冊か持っていますが、神田橋先生にしか出来ないようなアプローチもあり、まさに仙人の技、みたいな感じです。が臨床には役立つ内容が多いように私は感じました。
躁鬱病(双極性障害)でお悩みの方は、一読して自分自身に役立つ工夫や技術が見つかるといいですよね。また、躁鬱病を患う当事者の読み物としても大変、面白かったです!!
ではでは。